【よくみて、それを生かして】
大橋秀夫
昨年の年報に新美南吉はすぐれた自然観察者だと紹介しましたが、先日の朝日新聞(平成20・1・17)に面白い記事が載っていました。記者ノートのタイトル「南吉流親身の添削指導」には、安城高等女学校の作文の指導で、南吉が生徒の作文を赤ペンで添削しています。作文に「君自身の独創性で光っている箇所がない。畢竟、観察が足りないのである。」と添削している。この新聞記者も添削された作文をみて先輩記者から、「もっとよくみてこてよ」となんども書き直しさせられたことを思い出す。と述べている。
南吉の童話、詩、日記にはしっかりと自然観察したから表現できる作品が多い。とくに私は童謡「枇杷の花の祭り」が好きだ。冬場に目立たなく咲く白い枇杷の花、その花めがけて飛んでくる蜜蜂。冬なので羽音がブーンでなくブウヨ、ブウヨとかよわく響く。こんな自然を観察する南吉には、脱帽する。
過日の協議会の研修で、今井信吾さんがお見えになった。(私は上高地で九年間パークボランティアをやったことがあるが、奥様の由美子さんにはとてもお世話になった。) その今井さんが研修会で、「よくみて、それを地域にいかして」とお話された。まさにそのとおり。自然観察会はよくみて、それを自分の町に役立てることだと以前から思っていた。
これまでに私は半田運河で自然を観察することで、家庭で眠っている鯉のぼりを運河に掲げるよう市に提案したり、ミツカンさんの臭い酢のにおいを逆手にとり、かおりととらえ「かおり風景百選」とした。また酢の里前の丸型郵便ポストを、愛知県第一号の「日本丸型ポスト協会認定ポスト」とした。これは南吉記念館も常滑焼き物散歩道の認定ポストも私がご提案したもの。自然観察路「ごんの小径」も任坊山の野生ツツジ道路もいずれも自然観察の結果を地域づくりに役立てた結果といえる。
さて、これからはこんな遊び企画を考えている。一つは「ごんぎつね」を住民登録し、多摩川のたまちゃんのように、特別住民票を交付すること。二つ目は半田運河に「黒河童のあきらくん」がすんでいることにし、遠野の河童淵のような観光地とすること。半田運河沿いは黒板の建物で、黒いカワウがボラを飲み込んでいる。また黒澤明監督の「姿三四郎」では、悪漢を運河に投げ飛ばしているが、これは本当は黒河童の仕業だとする。黒河童はきゅうりでなくボラが好物。(今井さんは河童淵のきゅうりを紹介していたが、私も昨年秋にこの遠野の河童淵を旅行した。) 三つ目は新美南吉記念館から半田池までの矢勝川沿いの自転車道路を朝日新聞の「日本の里百選」にすること。この半田池までの土手は、カワセミやオオタカなどの野鳥も多く、大量の湧水もみられ、農の風景もありとても景観のよいサイクリングロードです。この三つをこれからなんとか実現できるようがんばりたい。